米オハイオ州 危険物積載の列車脱線事故、悪臭で頭痛や喉の痛み訴える住民
大気中に漂う強い塩素臭。夫婦で2人の子どもを育てる住民のネイサン・ベレスさんは、たちまちのどや目が焼けるような痛みに襲われた。
この悪臭は、米オハイオ州とペンシルベニア州の州境付近で今月3日、危険物を積んだノーフォーク・サザン鉄道の列車が脱線する事故が起きて以来、2週間近く漂い続けている。列車は炎上して何日も燃え続け、周辺住民は避難。塩化ビニールを放出するために制御した爆破も行われた。高濃度の塩化ビニールは死亡につながりかねず、発がんリスクが増大する。
避難命令は8日に解除されたが、地元イーストパレスタイン(人口5000人)の一部の住民は水や大気、土壌、地表がまだ安全ではないとの懸念から、自宅に戻らずにいる。
ノーフォーク・サザン鉄道は15日、従業員の安全が脅かされる可能性があるとして、同日夕に予定されていた地域の会合には出席しないと発表した。
同社はこの会合で地元当局者らと共に、事故現場の除去作業の状況や、水質・大気検査の結果について説明する予定だった。
住民の多くは事故発生以来、不安を募らせており、自費で避難を続ける住民もいる。
州は15日、イーストパレスタインの自治体が提供する水は汚染されておらず、安全に飲用できると改めて発表した。
大気や水質の検査で当局が安全と判断したことを受け、避難命令は事故から5日後の今月8日に解除された。
一方で、汚染された可能性のある土壌がまだ現場から除去されていないと記された公文書が公開されるなど、不安な兆候は次々に浮上する。
米環境保護庁(EPA)はイーストパレスタインで採取した大気について、塩化ビニール、塩化水素、一酸化炭素などの検査を実施したと説明。14日にEPAのウェブサイトに掲載された検査結果によれば、いずれも基準値を超える値は検出されなかった。
しかしベレスさんは、自宅の様子をチェックするため13日に一時的にイーストパレスタインに戻ったところ、頭痛に襲われて一晩中痛みが続いたと訴える。
「もし安全に居住できるというのなら、なぜこんな痛みを感じて呼吸が苦しいのか?」とベレスさんは疑問をぶつけた。
オハイオ州保健局長は14日、脱線現場周辺で人が頭痛やのどの痛みを感じたり、猫やニワトリなどの動物が死んだりしていることについて、大気汚染が原因ではないようだと説明。「これまでの検査の結果、検出されたとしても測定値は極めて低い」と強調した。
悪臭については、現場から遠く離れた場所でも臭いを感じることがあるとEPAは説明。「汚染物質の臭いがすることがあっても、有害とみなされる値よりははるかに低い」としている。
はかり知れない影響があるとして水の使用を控える住民もいる。ベレスさんは「水を出したり、娘を入浴させたりすることも、もしかしたら有害なのかもしれない」と不安な思いをフェイスブックに書き込んだ。
実際に一部の水路は汚染されていた。それでもオハイオ州環境保護局は、汚染は封じ込めたと確信していると話す。
同局は14日、脱線現場近くの地下水路から塩化ビニールは検出されなかったと述べた。一方、オハイオ州自然資源局は、脱線事故による化学物質の流出で、12種3500匹の魚が死んだと推定している。
ベレスさんは、未知の長期的な影響についても懸念している。
ベレスさん一家は自宅から30分ほど離れた民泊施設を渡り歩いている。しかし資金は底を尽きかけており、友人が一家のためにクラウドファンディングサイトで支援を募っている。
危険物積載の列車脱線事故、バイデン政権が支援提供 米オハイオ州
米オハイオ州とペンシルベニア州の州境付近で今月3日、危険物を積んだ鉄道列車が脱線する事故が起きた問題で、バイデン政権は17日までに、現地のオハイオ州イーストパレスタインに対し、地元保健福祉省(HHS)と疾病対策センター(CDC)からの支援を提供した。地元住民の間では、健康や飲料水の安全性への不安が広がっている。
ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官によれば、共和党のデワイン・オハイオ州知事は公衆衛生に関する追加の試験、評価を求めた。現在HHSとCDCのチームが派遣されているという。
ジャンピエール氏はイーストパレスタインで必要な支援について、連邦緊急事態管理庁(FEMA)で対応可能な範囲を大幅に上回ると示唆。現地の状況は自然災害の後と「非常に異なる」と説明した。それでもFEMAは引き続き支援を提供すると付け加えた。
HHS、CDC、さらに環境保護庁(EPA)が、災害対策本部やオハイオ州の緊急事態管理局と共同で活動に当たる。また国家運輸安全委員会(NTSB)も脱線事故の調査に乗り出していると、ジャンピエール氏は述べた。
その上で、ホワイトハウスの「最優先事項」は「地域共同体の健康と安全」だと強調。連邦政府の各機関が事故原因の真相の究明や大気の質の監視、土壌サンプルの収集に当たっていると説明した。地表水及び地下水の汚染物質の有無も調べているという。
一方、デワイン州知事はイーストパレスタインの最新状況を説明する中で、CDCに対して即時の支援を要請したと明らかにした。脱線事故からは既に2週間近くが経過している。
支援の具体的な内容は、「直ちに」医療の専門家を現地に派遣し、住民の疑問への対応や頭痛やのどの痛みなどの症状を訴える住民の診断を行うことだとした。
危険物搭載の列車が脱線して爆発の恐れ、住民に避難命令 米オハイオ州
米オハイオ州イーストパレスタインで列車が脱線し、大規模火災が続いている。当局は現地時間の5日夜、爆発の危険があるとして周辺の住民に直ちに避難するよう呼びかけた。
オハイオ州のマイク・デワイン知事は5日に発表した声明で、車両内の温度が過去2時間の間に激変したと説明。タンカーが爆発すれば、破片が1マイル(約1.6キロ)の範囲にまで飛び散る可能性があるとした。
危険物を積んだノーフォーク・サザン鉄道の列車は3日に脱線して炎上。環境への影響も懸念されている。
現場では爆発を防ぐための作業が続けられているが、付近の住民は今すぐ避難する必要があると知事は強調した。地元当局者によると、半径1マイル圏内の住民は既にほとんどが避難しているが、500人あまりが自宅に残っているという。
当局はまた、環境への影響についても観測を続けている。
調査に当たっている国家運輸安全委員会(NTSB)によると、脱線した列車は100両以上の編成で、うち約20両が危険物を搭載していた。
NTSBの4日の発表によると、脱線した10両のうち5両は塩化ビニールを搭載していた。圧力解放装置以外からの塩化ビニールの放出は確認されていないとしている。
現場で緊急対応に当たっている環境保護庁(EPA)の調整官は、大気や水を検査した結果、5日の時点で異常な値は検出されず、品質は安定した状態が続いているとしながらも、いつ状況が変わってもおかしくないと強調した。
人口約5000人の町全体と、現場から半径1マイル以内の住民を対象とする避難命令は、5日現在も解除されていない。
列車脱線、炎上現場で危険ガスの放出作業 米オハイオ州
米オハイオ州イーストパレスタインで脱線、炎上した列車のタンカーから、危険なガスを抜いて燃焼させる作業が6日に始まった。
当局によると、3日に脱線した列車の5両に可燃性ガスの塩化ビニールが搭載され、爆発すれば有害な煙や破片が拡散する恐れがあった。
列車を運行するノーフォーク・サザン鉄道の発表によると、特殊な爆薬を使って車両に小さな穴を開け、放出されたガスを燃やして処分する作業が進行中。すでに放出は完了し、燃焼の段階に数時間かかる見通しだという。
当局は現場周辺の住民に避難を呼び掛けてきた。オハイオ州のデワイン知事は6日の記者会見で、避難対象区域は隣接するペンシルベニア州にまたがり、住民が帰宅できる時期は不明だと述べた。
また、現場のすぐ近くにとどまっている住民は命にかかわる危険に直面し、周辺地域でもやけどや肺の重大な損傷の恐れがあると警告した。
地元保安官はフェイスブックへの投稿で、指定区域内で避難を拒否した住民は逮捕される可能性があると指摘。子どものいる世帯が避難しなかった場合、子どもを危険にさらした罪にも問われると述べた。
事故を調査している国家運輸安全委員会(NTSB)のメンバーによると、脱線の直前に機械的なトラブルを示す警告が出て、緊急ブレーキをかけたが間に合わなかったことが分かった。
現場は火災で立ち入りが禁止され、片付けに時間がかかることが予想される。調査結果の仮報告が出るのは4~6週間後になるという。
現地報道 動画
Drone video shows train accident, fire in East Palestine, Ohio
There were more toxic chemicals on train that derailed in Ohio than originally reported, data shows
Surveillance video shows the timeline of Ohio toxic train derailment