関空鉄道2週間ぶりに始発から運転を再開
台風21号の影響で破損した関西空港連絡橋を走る鉄道部分の復旧工事が完了し、JR西日本と南海電鉄は18日、2週間ぶりに始発から運転を再開した。関空への交通機関のうち利用者の約8割を占める鉄道の再開で、21日以降の旅客便運航全面回復を前に大幅なアクセス改善となる。
自動車専用道路と鉄道が走る連絡橋は4日、強風で流されたタンカーが道路部分に衝突。2本の橋桁が中央の鉄道線路側にずれ、押し出される形で鉄道の橋桁も約50センチずれた。
道路を管理する西日本高速道路がずれた橋桁2本を14日までに撤去し、鉄道部分を保有する新関西国際空港から委託を受けたJR西が線路への影響を調べ工事を進めていた。当初21日の再開をめどとしていたが、想定より損傷が少なく前倒しした。
JR西と南海の2社は関空と対岸のりんくうタウン駅(大阪府泉佐野市)の間を1日計約400本運行。関空運営会社の関西エアポートは21日に第1ターミナルが全面復旧し旅客便の運航スケジュールが被災前の水準に戻るとしており、空港アクセスが課題となっていた。
(産経WEST)
(Photo by SankeiNP)
台風21号チェービーがもたらした被害
台風21号チェービーは、
・8月中の台風発生個数が9個目となるのは、1994年(平成6年)以来、24年ぶり
・中心気圧905hPa、最大瞬間風速80m/sと観測史上の歴代最強クラスまで、猛烈に発達
・台風21号が「非常に強い」勢力を保ったまま上陸すると、1993年(平成5年)9月3日に薩摩半島南部に上陸
した台風13号・国際名ヤンシー以来25年ぶり
・JR西、JR四国、京阪神の私鉄が一斉に事前の運転休止を決定
・航空各社、相次いで欠航予定を発表。欠航便は600便超
・阪急、阪神、大丸、松坂屋、近鉄、高島屋が相次いで休業を事前発表
・関西電力は延べ219万戸で停電
・家屋損壊、高潮や大雨による浸水被害甚大
など、大きな被害をもたらしました。近畿方面だけではなく、北陸や北海道でも多くの風水害、停電が発生しました。北海道では5日夜には8万個余りが停電、家屋損壊や倒木などの被害があったその翌6日未明、巨大地震が発生しました。この北海道胆振東部地震の発災によって、台風21号の甚大な被害状況の報道が一気に地震情報へシフトしてしまい、近畿圏の被害状況が報じられる機会がほとんどなくなりました。台風21号から地震発生まではわずか2日程度の時間経過です。9月13日現在、関西電力管内では、いまもなお2,413戸の停電が継続しており、同社によると「全面復旧までには、なお日数を要する」としています。
ことしは、4月に島根県西部地震、6月に大阪府北部地震、6月末から7月にかけての集中豪雨で200人以上が犠牲となった平成30年7月豪雨といくつもの自然災害が発生しています。いずれの災害も、復興を終えたわけではなく、その途上にあり、これは、熊本も、そして東日本大震災も、です。
自分自身が実際に被災者の立場になることで、各地のいまの様子に思いがめぐるという方も多くいらっしゃると思いますし、私自身もその一人です。
大きな報道機関は、短くても、小さくても、日々継続した報道をしてほしいと願います。
関西国際空港の孤立
台風21号では、関西国際空港への被害が全国的に多く報じられました。
取り残された旅客や航空路線の再開目処、そして連絡橋のタンカー衝突事故についてのニュースは頻繁に流れてきました。そんな中、関空の職員の方がSNSなどを通じて、「職員も、旅客と同じように水も食事も不足する中、休む間もなくお客様の対応や業務を行っていて、その上、早期再開って…」早期再開ばかりを連呼し、そこに勤務する職員への配慮など微塵も感じられない関係機関への悲痛な思いが拡散されました。
かくいう私も、東日本大震災では発災後3日間は寝る間もなく仕事をして、ようやく一時帰宅したのが5日目、2週間はほぼ24時間勤務先に詰めている状態でしたから、このような方の状況は少なからず経験しています。ですが、これは多くの方がそうだったでしょうし、被災地を思えば。
関空連絡橋 損傷した橋桁を撤去
NEXCO西日本高速道路は9月12日、関西国際空港の連絡橋の損傷した橋桁の撤去を開始しました。
台風21号の強風でタンカーが衝突、橋桁が並行する鉄道の線路側にずれ、電車の走行を妨げていました。
順調に進めば14日にも作業が終わる見込みで、作業後、JR西日本が運行再開のために鉄道部分の橋桁の修復に着手する予定です。
損傷した橋桁部分は全長約188メートル、重さは約2千トン。
12日に撤去した部分は長さ90メートル、幅15メートルの橋桁で、タンカーの衝突により1.5メートルほど横ずれしていました。
12日午後から大型のサルベージクレーン船で吊り上げ、13日に和歌山県内の工場に搬送、撤去した橋桁の損傷程度を調査、修理・再利用するかどうかを検討します。
損傷した橋桁の撤去後、鉄道部分の修復を行うのJR西日本が主体となります。
関空連絡橋の権利・監督関係は複雑で、道路部分は「日本高速道路・債務返済機構」が保有し、管理・運営はNEXCO西日本高速道路。
鉄道部分は新関西国際空港会社が保有、JR西日本と南海電気鉄道に貸与しています。鉄道部分の工事はJR西日本が担い、NEXCO西日本と連携して行う方式となります。
NEXCO西日本は、14日、並行する鉄道の線路側にまでずれこんでいた98メートル分の橋桁を撤去し、JR西日本などが線路の詳細な損傷調査・点検、補修に着手します。現在までに、50cm程度線路がずれていることが確認されており、レールのゆがみなどが見つかれば、レール本体の交換も視野に作業を進めます。
国土交通省は当初、鉄道復旧までに4週間程度を要するとの見解を示していましたが、石井国土交通相は11日、9月中に鉄道の運行を再開できる見込みであるとしました。
関空連絡橋の道路部分は片側2車線の4車線分がありますが、タンカーの衝突事故により、北側の2車線を対面通行として運用しています。
今回、橋桁を撤去した道路部分の復旧について、橋桁を新しく作って掛けかえる場合は少なくとも1年近い期間がかかるといい、撤去した橋桁を修理・再利用するとしても年内に完了させるのは厳しいレベルであるとしています(建設関係者)。
関空連絡橋の道路部分の全面復旧・開通には、相当な時間がかかりそうです。