「避難勧告」が廃止されました
自治体が発表する避難情報は、一昨年(令和元年)5段階の警戒レベルによる運用が始まりましたが、必ずしも的確な避難につながっていないとして、改めて情報を変えるための災害対策基本法の改正案が提出され、令和3年4月28日の参議院本会議で可決、成立しました。
改正案の成立により、「避難勧告」が廃止されました。
改正災害対策基本法の施行は、令和3年5月20日零時からです。(内閣府)
新たな大雨警戒レベル
レベル3「高齢者等避難」
レベル4「避難指示」
レベル5「緊急安全確保」
「警戒レベル4・避難指示」で、全員が直ちに避難
警戒レベル3・高齢者等避難
警戒レベル3 高齢者等避難は、災害が発生する恐れがある状況、災害リスクのある区域の高齢者が安全な場所にあらかじめ避難できるよう、市町村長から必要な地域の居住者等に発令されます。
避難に時間がかかる高齢者が早めに避難できるようにすることで、安全を確保します。
障害のある人やその支援者も含まれます。
警戒レベル3では、高齢者以外の人も、出勤等の外出などを控え、避難の準備や、自主的に避難してもよいタイミングとされ、特に災害時に危険性が高い地域にいる場合は、この段階で避難しておくことが推奨されます。
警戒レベル4・避難指示
警戒レベル4 避難指示は、災害が差し迫っている状況で、住民が危険な場所から避難するべきと各自治体の長が「必要と認める」地域の居住者に対して、発令されます。
「必要と認める」は、今回の災害対策基本法で改正が行われた部分で、法改正前では、立ち退き避難が発令されたエリアでは、マンションの高層階に住む住民もまとめて避難させる必要がありましたが、改正後は、浸水想定地域内のマンションの低階層や平屋などに住んでいる人のみに避難指示を発令することが可能となりました。
洪水によって影響を受けにくい、マンションの高層階の居住者などは居住者の自らの確認・判断で自宅に留まることもできる「屋内安全確保」という手段を選べるという改正内容です。
ただし、土砂災害の危険がある区域では立ち退き避難が原則です。
警戒レベル5・緊急安全確保
警戒レベルの最上位である「警戒レベル5」では、改正前、災害が実際に発生している状況を警戒レベル5「災害発生情報」としていましたが、「自分はどうしたらよいのか」という具体的な行動が分かりにくく、また、市町村が実際に災害が発生していることを把握することができず「発令できない」状況も多くあり、有効に機能していないとの指摘がありました。
今回の災害対策基本法改正で、「警戒レベル5」は、「緊急安全確保」となり、既に災害が発生している、または、発生している可能性が高いため、あらかじめ設定された避難所への避難がかえって危険であるという状況とし、想定していたより急激に災害が切迫してしまった場合など、逃げ遅れてしまった人達が取るべき対応を定めています。
「警戒レベル5・緊急安全確保」が発令された場合、自宅や近隣の頑丈な建物など、できるだけ身近で安全な場所を「確保」することを求めています。特に、洪水や高潮などでは、無理に避難所へ行くよりも自宅の高層階や近隣の高い建物など、少しでも浸水しにくい高所へ移動することで、安全を確保できる可能性が高いとしています。
避難指示で必ず避難 避難勧告は廃止です(内閣府・消防庁)
避難って何すればいいの?
報道
「避難勧告」廃止し「避難指示」に一本化 法律改正案可決 成立
NHK:20210428
「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化するなど自治体が発表する避難情報の大幅な変更につながる災害対策基本法の改正案が、28日の参議院本会議で可決、成立しました。
来月にも施行される見通しです。
自治体が発表する避難情報は、おととし5段階の警戒レベルによる運用が始まりましたが、必ずしも的確な避難につながっていないとして、改めて情報を変えるための災害対策基本法の改正案が提出され、28日の参議院本会議で可決、成立しました。
新たな大雨警戒レベルは、
レベル3が「高齢者等避難」
レベル4が「避難指示」
レベル5が「緊急安全確保」です。
レベル3の「高齢者等避難」はこれまでは「避難準備の情報」でしたが、対象をより明確にし、いち早い避難につなげるため名称が変わりました。
高齢者や体の不自由な人など移動に時間がかかる人は避難を始める段階です。
このほかの人も避難場所の確認などを進め、危険を感じたら自主的な避難を始めるとしています。
レベル4は、これまで「避難勧告」と「避難指示」がありましたが、違いが分かりにくいとして「避難指示」に一本化されます。
危険な場所にいる人は全員、避難が必要です。
レベル5は従来の「災害発生情報」では取るべき行動がわかりにくいなどとして、「緊急安全確保」に変わります。
災害が発生、もしくは切迫している状況に発表されます。
建物の2階以上や、崖の反対側など、少しでも安全な場所で命が助かるような行動を取ることが必要です。
しかし「緊急安全確保」は必ず発表されるわけではなく、レベル4の「避難指示」までに避難を終えるよう求めています。
このほか、1人暮らしの高齢者や体の不自由な人など、支援が必要な人の避難方法を具体的に決める「個別避難計画」の策定を、すべての市区町村の努力義務とする内容も盛り込まれています。
改正災害対策基本法は来月にも施行される見通しで、ことしの梅雨からは、自治体が新しい情報に基づいて呼びかけることになります。
専門家「早めの備えに活用してほしい」
今回の避難情報の変更について、国の検討会のメンバーも務めた静岡大学の牛山素行教授は、情報を変更しただけではその効果は発揮されないとして「自宅や仕事先も含めて身の回りのどこでどのような災害が起こりうるか、ハザードマップなどで理解しておくことがすべてのスタートラインで、私たち一人一人が理解し、行動を起こして初めて役に立つ」と指摘しました。
そのうえで避難勧告が廃止され、避難指示に一本化されたことについては「いきなり『避難指示』が出て混乱する住民がいるかもしれないが、自治体は市民全員などではなく、災害の危険性がある地域に絞って発表することが必要だ。また、住民の側もレベル3の『高齢者等避難』は高齢者のためだけの情報ではなく、一般の人の行動を見直す情報でもあるので、早めの備えに活用してほしい」と話しています。