長周期地震動に対応した防災気象情報の強化について(気象庁)
報道発表日
令和4年10月26日
概要
令和5年2月1日から、緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を追加するとともに、長周期地震動に関する観測情報の発表を迅速化します。
長周期地震動とは、大きな地震で生じる、ゆっくりとした大きな揺れ(周期が長い揺れ)のことをいいます。高層ビルなどでは長周期地震動により大きく長時間揺れ続けることがあります。
このたび、長周期地震動による被害の軽減に資するため、令和5年2月1日(水)から、以下の防災気象情報の強化を行います(詳細は別紙参照)。
- 緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を追加
長周期地震動による被害の可能性がある場合も緊急地震速報を発表するよう、予想される長周期地震動階級を、緊急地震速報の発表基準に新たに追加します(※)。
長周期地震動階級の基準による緊急地震速報が発表されても、伝え方や見聞きした際にとるべき行動は変わりませんので、慌てずに身の安全を守ってください。
高層ビル等に関係される方々は、大きな地震で発生する長周期地震動への備えのため、11月2日(水)に実施予定の全国的な緊急地震速報の訓練の機会等を捉えて、訓練実施等をご検討ください。
(※)緊急地震速報の発表基準の変更について
https://www.data.jma.go.jp/eew/data/nc/lpgm_start/lpgm_start.html - 長周期地震動に関する観測情報の発表を迅速化
現在、地震発生から20~30分程度を要している長周期地震動に関する観測情報の発表を迅速化し、地震発生から10分程度で発表します。高層階での被害の可能性を把握するなど、様々な防災対応へご活用ください。
防災気象情報の強化に向け、気象庁HPの長周期地震動のページを順次リニューアルし、より分かりやすく紹介していきますので、是非ご参照ください。
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/choshuki/index.html
(気象庁)
発表資料全文
[pdf id=’65921′]
報道
ビルの高層階をゆっくりと揺らす「長周期地震動」について、気象庁は26日、来年2月1日から、予測を緊急地震速報の発表基準に加える運用を始め、観測情報(階級1~4)もオンラインで配信すると発表した。震源地から離れていて震度4でも高層では立つのが困難なほどの揺れを観測した事例があり、ビル利用者らに注意を促す。
緊急地震速報は現在、最大震度5弱以上を予測した地震について、震度4以上の地域が発表の対象。新たに長周期地震動の階級3以上を予測した地域も対象となる。
観測情報は現在もホームページで見られるが、民間の防災アプリなどを通じた配信を想定しており、周知を迅速化。階級1以上を記録した気象庁の観測点を地震発生から約10分後に知らせる。冒頭には「大阪府北部」などと地域で記す。
特に震度4以下かつ階級3以上は長周期地震動の被害に気付きにくいとして、見出しに「以下の地域では、高層ビル高層階では非常に大きな揺れとなっていた可能性があります」と強調する。
気象庁が2000年~22年9月末に起きた地震を調べると、震度4以下で階級3以上を観測した気象庁の観測点は6つの地震で計30地点あった。うち11年3月の東日本大震災では北海道の苫小牧市末広町、新潟県の新潟中央区美咲町など17地点に上った。気象庁の観測点ではないが、震度3の大阪市住之江区の「大阪府咲洲庁舎」(55階建て)では階級3以上の揺れがあった。
南海トラフ巨大地震でも被害が懸念される。気象庁の担当者は「震度だけでは想像しにくいが、揺れに備えるという意味では違いはない。これらの情報を防災に役立ててほしい」と話す。(共同)
令和5年2月1日より、緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を追加します(気象庁)
変更内容
これまで緊急地震速報は、震度の予想によって発表してきました。令和5年2月1日より、発表基準に長周期地震動階級の予想値を追加して提供することとし、長周期地震動階級3以上を予想した場合でも、緊急地震速報(警報)※を発表します。
シミュレーション結果(平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震)
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の観測データからシミュレーションした結果です。この場合、大阪府南部では震度の警報基準に達しませんが、長周期地震動階級では警報基準に達します(図中赤円内)。そのため、新たな発表基準では大阪府南部にも緊急地震速報(警報)が発表されることになります。
実際に東北地方太平洋沖地震発生時には、大阪市は最大震度3でしたが、高層ビルではエレベーターの停止による閉じ込め事故や、内装材や防火扉が破損するなど、長周期地震動による被害が発生しました。
なぜ緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を加えるのか
過去の長周期地震動による被害を踏まえ「長周期地震動に関する情報検討会」を開催し検討を行ってきました。
検討の結果、
- 長周期地震動により人命に係る重大な災害が起こるおそれがある
- 近年の高層ビルの増加により長周期地震動の影響を受ける人口が増加している
- 長周期地震動階級を予測する技術が進展し実用の域に達した
ことにより、気象庁から警戒・注意を呼びかける予測情報を発表することとされました。また、予測情報の発表の仕方としては、複数の異なる警報を出すことは受け手側の対応が困難になることやとるべき行動に大きな違いがないことから、緊急地震速報の基準に加えることが妥当とされました。
どのように伝えるか
緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級が加わりますが、緊急地震速報発表の流れは変わらず、区別せずにお伝えします。
緊急地震速報の内容として、
- 長周期と短周期でとるべき行動に違いが無い
- 猶予時間が限られる
- 長周期地震動階級で緊急地震速報が発表される頻度は少ない
- 長周期地震動階級3以上の場合は震度3以上が観測されることが多い
ということからも、現行の緊急地震速報と同様にまずは身を守る行動をお願いします。
よくある質問
長周期地震動に関する利活用事例
気象庁が発表する長周期地震動に関する情報や、長周期地震動の予報業務許可を得ている民間事業者による予測情報を用いて、ビルの管理者への注意喚起やエレベーターの制御などを行うことにより、長周期地震動による被害の軽減が期待されます。
利活用事例を以下のページでご紹介しておりますのでご参照ください。
気象庁では令和2年9月より長周期地震動に対する予報業務許可を実施しており、許可事業者による予測情報を得られるようになっております。
予報業務許可については以下のページをご参照ください。
関連リンク
長周期地震動、長周期地震動階級について詳しく知りたい方はこちら
緊急地震速報を見聞きした時の身を守るための具体的な行動についてはこちら
関連資料
(気象庁)
参考(英語表記)
緊急地震速報
Earthquake early warning
長周期地震動
Long-period ground motion
気象庁資料等では、LPGM(lpgm)との略表記あり