地震

緊急地震速報の発表基準に「長周期地震動」階級を追加

長周期地震動 東北地方太平洋沖地震における長周期地震動階級(事後分析による)

 

長周期地震動予測 2月1日正午開始|気象庁

気象庁は2月1日正午から、ビルの高層階を長時間にわたり、ゆっくりと揺らす「長周期地震動」の予測を緊急地震速報の発表基準に加える。

4段階ある階級のうち3以上が予想される地域が対象。

家具類が動くなどして命に関わる重大な災害を引き起こす恐れがあり、身を守る行動に役立ててもらう。

緊急地震速報は最大震度5弱以上の揺れが予想される地震について震度4以上が見込まれる地域に出る。

今後は長周期地震動の階級3以上が予想される地域であれば、震度3以下でも速報の対象になる。

長周期地震動は地震の規模が大きいほど発生する。共同

 

 

気象庁報道発表

長周期地震動等に対応した防災気象情報の強化にかかる運用開始日時について

 

概要

令和5年2月1日(水)12時から、緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を追加するとともに、長周期地震動に関する観測情報の発表を迅速化します。また同時に、推計震度分布図を高解像度化・高精度化します。

 

本文

緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級を追加するとともに、長周期地震動に関する観測情報の発表を迅速化すること、また、従来よりも高解像度化・高精度化した推計震度分布図の提供を開始することについて、令和5年2月1日(水)から実施する旨報道発表(※)でお知らせしておりました。

今般、所要の準備が整ったことから、以下の日時より運用を開始します。

運用開始日時 : 令和5年2月1日(水) 12時00分
*地震活動の状況等によっては、運用開始を延期する場合があります

長周期地震動階級の基準による緊急地震速報が発表されても、伝え方や見聞きした際にとるべき行動は変わりませんので、慌てずに身の安全を守ってください。

また、現在、緊急地震速報(警報)のうち、震度6弱以上が予想される場合を特別警報に位置付けておりますが、令和5年2月1日からは、これに加え、長周期地震動階級4が予想される場合も特別警報に位置付けます。

(※)報道発表
 〇長周期地震動に対応した防災気象情報の強化について(令和4年10月26日)
 https://www.jma.go.jp/jma/press/2210/26b/20221026_lpgm_start.html
 〇推計震度分布図の高解像度化・高精度化について(令和4年12月16日))
 https://www.jma.go.jp/jma/press/2212/16a/20221216_suikei_250m.html

参考(知識・解説のページ)
 〇長周期地震動について
 https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/choshuki/index.html
 〇推計震度分布図について
 https://www.data.jma.go.jp/eew/data/suikei/kaisetsu.html

 

 

長周期地震動

高層ビルなどを襲う非常に大きな揺れを予測し迅速に発表へ 気象庁が緊急地震速報に「長周期地震動」1日から導入

長周期地震動 階級

 

【長周期地震動】“緊急地震速報”に追加へ…高層ビルに注意 取るべき「3つの行動」

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【解説】変わる緊急地震速報…長周期地震予測情報が追加『週刊地震ニュース』

【解説】変わる緊急地震速報…長周期地震予測情報が追加『週刊地震ニュース』

 

長周期地震動

長周期地震動(ちょうしゅうきじしんどう、英語: long-period earthquake ground motion)とは、地震で発生する約2 – 20秒の長い周期で揺れる地震動のこと。

周期が長い、すなわち低周波領域で発生するため低周波地震動とも。

地震計の発展とともにその存在と性質が研究されるようになり、特に高層建築物が増えた近年は、防災の観点からも対策が重要となっている。

地震動を観測した地震波を見ると、様々な周期の波が含まれているが、発震のエネルギー規模が大きいほど周期が長くなり(長周期、低周波)、その主成分の表面波は震源が浅いほど卓越することが知られている。

地震動のうちこのような震動成分を特に長周期地震動とよぶ。

大規模地震では周期が数百秒を超える地震動(超長周期地震動)や地球自由振動も観測される。

現在の気象庁では防災の観点から周期が1.6 – 7.8秒の長周期地震動を観測対象としている。

 

長周期地震動が建造物におよぼす影響

長周期地震動が及ぼす被害は主に、地震動の周期が地盤や建物などが構造的にもつ固有振動と共振を起こし、構造物の振幅が増大することにより引き起こされる。長周期地震動は減衰しにくいため、共振が長く続いて振幅が大きくなりやすい。

長周期地震動が認識される以前にも、地震動と建造物の固有周期の関係は認識されており、関東大震災以降には耐震性構造に関する柔剛論争があった。しかし中低層構造建築が主流であり、振動地震による建造物の破壊は、剛性を高めることで大部分は防ぐことができるとされ、共振による被害の発生は非常に少ないと考えられてきた。

ところが高層建築物が増え、やがて大きな地震発生時に低層建築には見られない「船に乗っているような」「酔うような」と表現される地震動が経験的に知られるようになった。そして2003年の十勝沖地震で発生したスロッシングによる石油備蓄施設での原油火災が起き、地震で発生する長周期地震動が一般にも注目を集めるようになり、被害の研究が進んだことで、地震に強いとされてきた既設の超高層ビルに対して、今後破壊的ダメージがもたらされる懸念が出てきた。

大きな振幅で揺れる高層建築物は、大きな歪みを生じて窓枠やガラス、外壁が破損落下したり、内部の立体駐車場やエレベータなどの機械の破損や機能不全を生じ、屋内の壁の亀裂や破壊、設置してある複写機や什器や家具がかなりの速度で動き周るほか、人はひとところに立っていられず、避難さえ困難になることがある。

 

日本国内の観測例

2000年鳥取県西部地震
2000年鳥取県西部地震の際は、大分県で周期5秒から10秒の長周期地震動が観測された。

2003年十勝沖地震
2003年の十勝沖地震の長周期地震動によって、北海道苫小牧市の石油コンビナートでスロッシング(石油タンク内の石油の共振)によりあふれた石油に引火して火災が発生した。

2004年新潟県中越地震
2004年の新潟県中越地震の長周期地震動によって、震度3だった東京都港区の六本木ヒルズでエレベーター6機のワイヤーが共鳴したためワイヤーが損傷するなどしていた。現在は、ワイヤーにガイドを設けて対策を行っている。地震管制運転装置については、方式を変更し長周期地震動でも作動するように変更された。

2007年新潟県中越沖地震
2007年の新潟県中越沖地震では震源から200km以上離れた関東平野では最大震度4、東京都心は震度3で有ったが周期7秒程度の揺れが約3分間継続した。エレベータに人が閉じこめられるなどのトラブルが発生した。

2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、震源から離れた東京都内(23区の震度は「5強」)で長周期地震動を観測し、新宿センタービルなどの超高層ビルが最長13分間、最大1.08 mほど揺れていたことが判明している。また、ビルそのものが大きくゆっくりと揺れる映像も撮影されているが、世界的に見ても大都市のビルが軒並み長周期地震動によって揺れる映像が撮影された例がない。さらに震源から数百 kmも離れた大阪府でも(観測された震度は「3」)、長周期震動によりエレベーター停止による閉じ込め事故が起きたり、内装材や防火扉が破損するなどの被害が出た。なお、首都圏での周期3秒以上の振動は東京湾沿岸部で大きく、東北地方の地震よりも長野県北部地震や静岡県東部地震による影響が強かったと解析されている。
工学院大学の久田嘉章教授(地震工学)が、新宿区にある同大学のビルの揺れを再現したところ、ビル全体が大きく揺れただけではなく、ねじり振動という中層階が腰をくねらせたような揺れ方をする現象が起きていたと推測した。このため今回の地震では、ビル最上部よりも中層階で被害が大きかったとみられている。今回の地震については、あまりにも大きすぎる断層が震源となったため、これまで想定していなかった揺れ方や被害が起きていたとみられている。また今後、通常の長周期地震動のみならず、他の振動モードによる被害を想定した対策が必要とされている。3月9日に発生した最大前震(東京では江東区で震度3)でも同様の現象が観測されている。

長周期地震動 東北地方太平洋沖地震における長周期地震動階級(事後分析による)

緊急地震速報の発表基準に「長周期地震動」階級を追加

 

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