震源はアンカレッジの北13km
米アラスカ州南部で、現地11月30日午前8時29分(日本時間12月1日午前2時29分)、M7.0の大地震が発生した。
USGS(米国地質調査所)によると、震源は同州最大都市アンカレッジの北13kmで、地震の深さは40.9km、最初の地震はM7.0(速報値)と推定されている。現地では余震とみられる地震が繰り返し発生しており、本震を除く地震としてはM5.7の大きな地震を観測している。
— jlennyb (@jlennyb) November 30, 2018
アンカレッジは人口29万4千人余り
アラスカ州の首都であるアンカレッジには、29万4千人余りの人々が暮らす。
最初の揺れの直後、米国立気象局はクック湾と南キナイ半島に津波警報を発令したが大きな潮位の変化はなく午前10時までに警報を解除した。
クック湾は、アリューシャン山脈とキーナイ半島の間に挟まれた湾で、南西方向に伸び、湾の外はアラスカ湾、さらには太平洋に繋がる。湾奥にはアンカレッジの町がある。
クックという名称は、イギリスの探検家キャプテン・クックがこの地に立ち寄ったことにより、彼の死後の1794年に名付けられた。1853年にクック湾で海底油田が発見されて以来、アラスカ州内で2番目の石油や天然ガスの生産拠点ともなっており、石油・ガス田が開発されている。
Ceiling is falling down pic.twitter.com/ZPY6fhEPrp
— chase (@Chase_AK) November 30, 2018
被害状況の確認を進める
州関係者や地元警察によると、被害の全容にはいまだ時間を要するとしており、自治体関係者は「市内の主要なインフラでいくつかの被害を把握している。また、家屋の倒壊についても情報が集まりつつある。」という見解に留めている。
また、地元消防によると「家屋の倒壊被害に関する複数の通報があったが、詳しい状況をコメントできる状況にない。」と述べている。
アラスカ州の交通局は、アンカレッジと周辺地域の被害情報が複数寄せられているため、道路や橋などの検査・確認作業のため調査官を派遣したと発表した。
学校や保育園で子どもたちの安否を確認
アンカレッジ州当局は、区域内の学校や保育園など子どもたちのいる施設に向けて、速やかに警察官を派遣、学校関係者らと協力しながら子どもたちの安否確認や安全の確保に努めているとしながらも、詳細な情報の提供はできないとした。
トランスアラスカのパイプラインシャットダウン
800マイルの長距離アラスカパイプラインの管理者は、地震後の予防措置としてシステムを停止していると語った。
Alyeska Pipeline Service Companyの広報担当者によると、パイプラインの損傷は確認されていないとしている。
現状収集されている監視データをセンターで分析・評価し、損傷の可能性がある箇所について物理的な検査を実施する。ただ、物理的な評価が完了する前にパイプラインを再開できるだろうと述べた。
アンカレッジ国際空港は運用を全面停止
米連邦航空局(FAA)は、発災直後にアンカレッジ国際空港の「全面停止」を宣言した。
その後、速やかな安全の確認を行い上空で待機していた航空機の一部が着陸した。また、現地時間の午前11時30分には、同空港の出発便の離陸を開始するとFAAはコメントした。
津波警報の発令で気象業務が一時移管
アンカレッジを所管する米国立気象庁(NCI)の職員によると、通常、自宅から職場まで車で10分程度のところが40分以上かかったと語った。
彼によると、「揺れはとても恐ろしく、これまでM6クラスの地震の経験はあったが、(今回の地震は)私がいままでに経験したなかで最も強く、人生の中で最も恐ろしいものだった。」と述べた。
アンカレッジの全米気象局(National Weather Service)は津波警報が発令された後、職務をすべて中止、すべての業務はフェアバンクスの気象官署に引き継がれ、気象学者と職員は速やかに避難した。津波警報の解除後、すぐさまアンカレッジでの気象業務を再開したという。
アンカレッジ大学はキャンパスを閉鎖
アラスカ州アンカレッジ大学は、地震の後、キャンパスを閉鎖し、不必要な人員をすべて退去させ、すべての大学関係者にキャンパスから離れることを指示した。
Major earthquake in Anchorage this morning. @uaanchorage is closed. We have some damage. Currently assessing. No word of injuries, thankfully. Power still OK. This is one of our conference rooms. Kudos to our Incident Management Team for quick response. We are fortunate. pic.twitter.com/ZffVAwuIbY
— Cathy Sandeen (@CathySandeen) November 30, 2018
地震による死者が出る可能性は低い
米国地質調査所は、地震による死者の可能性は低いと推定している。
推定経済損失は、調査のアルゴリズムによれば、「オレンジのアラート」である1億ドルから10億ドルの間である可能性が最も高く、「この警報レベルの過去の出来事は、地域レベルまたは全米レベルの対応を必要としている」と同調査所はウェブサイトに掲載した。
太平洋プレートがアラスカの下に沈み込むエリア
米地質調査所(USGS)は、この地震が太平洋と北米の地質プレート間の断層線で発生したと述べた。断層間の破断は、太平洋プレートが北西にゆっくりと移動している地域で発生し、アラスカの下に沈み込む。地震の震源地は2枚のプレートの境界面に位置していなかったため、津波が発生する可能性が高かったとしている。
国立津波警報センターでは、アンカレッジのような高リスク断層線の地震直後に、津波警報を出す。
アラスカ州大地震と同じ金曜日
1964年3月27日にアメリカ合衆国アラスカ州で発生した地震は、聖金曜日に発生したことから、聖金曜日地震(The Good Friday Earthquake)とも呼ばれている。
今回の大きな地震も、金曜日であった。
当時のアラスカ州大地震は、Mw(モーメント・マグニチュード)で9.2という巨大地震で、131人の犠牲者を出した。現地時間午後5時36分(UTC:3月28日午前3時36分)、プリンス・ウィリアム湾近くのカレッジ・フィヨルドで長さ約850kmに渡って断層が破綻。
アンカレッジ市内の大部分の建物を破壊し、津波被害で沿岸部は壊滅的な被害を受けた。
大きな余震も含めて地震は3分間から5分間続いた。海底の変動により、いくつかの津波が発生し、最も多くの死者と被害を出す要因になった。地表は最大で11.5mの隆起を記録し、アラスカ州内の250,000平方キロメートルが地震の影響を受けた。
現地のテレビ報道