「内陸の津波」氷河湖決壊で1500万人に被災リスク|CNN
世界中の氷河が驚異的な速度で融解する中、これらの水は氷河の陥没部分を満たし、氷河湖と呼ばれる地形を形成している。気温上昇に伴い氷河がさらに溶け出し、このまま氷河湖の水位が上がる、もしくは周辺の土壌や氷が崩壊すると湖水があふれ、山肌を滑り落ちていく可能性がある。
氷河湖決壊として知られるこの現象に伴い、世界中でおよそ1500万人に危険が及ぶとする研究論文が7日、学術誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。氷河湖から約48キロ以内に暮らす人々がこれに該当し、その半分以上はインド、パキスタン、ペルー、中国の4カ国に集中しているという。
氷河湖決壊の潜在的な影響に特化した研究が行われたのは今回が初めて。専門家らはその影響について、どれだけ強調してもし尽くせないと警鐘を鳴らす。
ニュージーランド・カンタベリー大学の上級講師で、論文の共著者を務めたトム・ロビンソン氏は、氷河湖決壊を「内陸の津波」のようなものと形容。その威力をダムの突然の決壊で起きる大規模洪水になぞらえた。
こうした洪水は、ほぼ何の前触れもなく起きる。研究によると最大の危険地帯の一つ、ペルーのブランカ山脈では1941年以降、雪崩や氷河湖決壊など氷河に関連する災害が30回以上発生し、1万5000人以上が死亡しているという。
昨年のパキスタンでの洪水がどの程度氷河の融解に関係するものかは明らかでないものの、北部のギルギット・バルチスタン州では同年だけで少なくとも16回の氷河湖決壊が発生した。前年の5~6回から大幅に増えたという。パキスタンは極地を別にすれば、世界で最多の氷河を抱える国とされる。
今回の研究の結果、氷河湖決壊の危険が最も高いのはネパール、パキスタン、カザフスタンなどアジアの高山地域であることが分かった。同地域の人々は誰もが平均で氷河湖から約9.6キロの地点に住んでいるという。
しかしロビンソン氏は、ペルーやボリビアといったアンデス地方も極めて懸念の大きい地域の一つだと指摘する。これまで研究対象となることがほぼなかった同地域だが今回の研究により、過去20年間で氷河の融解が急速に進んでいることが明らかになった。気候危機の結果巨大な氷河湖が複数形成され、決壊の脅威が高まっているという。
ロビンソン氏によれば、北米とヨーロッパ・アルプスの場合は氷河湖周辺の人口が少ないため、地域の危険度自体は低下する。
氷河の融解は、気候危機の兆候として最も明白に確認できる部類に入る。最近の研究では、化石燃料の使用の段階的停止など、野心的な気候変動対策の目標を達成してもなお、最大で地球上の半分の氷河が今世紀末までに失われる可能性があると結論している。
An ‘inland tsunami’: 15 million people are at risk from catastrophic glacial lake outbursts, researchers find
©CNN202302071100EST