顕著な大雨に関する気象情報の新たな運用
気象庁は5月12日、線状降水帯の発生を報せる「顕著な大雨に関する気象情報」について、運用の基準を変更し、実際に発生が確認される前の予測の段階で発表しました。これまでより最大で30分程度前倒しするとしています。
気象庁は2021年から、「線状降水帯」の発生が確認され土砂災害や洪水の危険性が急激に高まった際に、「顕著な大雨に関する情報」を発表して、安全の確保を呼びかけています。
これまでは実際に線状降水帯の発生を確認した場合に「顕著な大雨に関する気象情報」を発する実況情報でしたが、5月25日から、最大で30分先まで、線状降水帯発生が予測される場合にも発表されるようになります。
線状降水帯の予測は赤色の点線、既に発生している線状降水帯は赤色の実線で表示
これまで線状降水帯が発生した場合、気象庁HPの「雨雲の動き」や「今後の雨」の画像上に、線状降水帯の雨域がどこかを大まかに把握できるよう赤色の楕円が実線で表示されていました。
5月25日からは、線状降水帯の発生予測エリアを赤色の点線で表現します。
また、実際に発生した線状降水帯のエリアを赤色の実線で表現します。
なお、予測された線状降水帯が、実際に発生したかどうかについては、気象庁ホームページの解説ページに自動で掲載されるとしています。
これまでの気象庁の検証では、2019年7月~2022年10月に線状降水帯が発生したとして「顕著な大雨に関する情報」を発表した122事例のうち、予測の段階で発表できなかったとみられるのは18事例(15%)としています。
また、過去の事例をもとに分析した結果、30分先までの「線状降水帯」の発生を84%の精度で“予測”できたとしています。
なお、大雨警戒レベル「4」相当以上、という情報の位置づけはこれまでと変更ありません。
発表基準
発表基準は、5キロ四方の3時間の解析雨量が100ミリ以上あり、それが分布している領域の面積の合計が500平方キロメートル以上確認された場合で、その領域の形状が「線状」であることなど従来と変わりませんが、新たな運用では実際に基準に達していなくても30分先までに達すると予測される場合に出されます。
報道機関による「線状降水帯」のニュース報道
気象庁では、「線状降水帯」の発生に関する情報を、「顕著な大雨に関する情報」として発表しています。
言い換えると、顕著な大雨に関する情報の中に、線状降水帯の発生及び発生予測が含まれています。
一部報道機関では、気象庁が「顕著な大雨に関する気象情報」として出す情報を、「線状降水帯発生情報」というタイトルで伝え、気象庁の「顕著な大雨に関する気象情報」が発出された時点で、「線状降水帯発生情報」という速報で伝えている場合があります。
線状降水帯に関する情報は、気象庁では「顕著な大雨に関する情報」として発表しますので、顕著な大雨に関する情報が発表された際には、猛烈な雨を降らせる線状降水帯が発生または発生することが予測され、甚大な災害が起こる可能性が高まっている(またはすでに発生している)状況にあり、気象庁は「大雨の危機感を少しでも早く伝えるため」と説明しています。
気象庁 報道発表
「顕著な大雨に関する気象情報」の新たな運用について~これまでより最大30分程度前倒しして発表します~
報道発表日
令和5年5月12日
概要
「顕著な大雨に関する気象情報」について、線状降水帯による大雨の危機感を少しでも早く伝えるため、令和5年5月25日(木)から、これまで発表基準を実況で満たしたときに発表していたものを、予測技術を活用し、最大30分程度前倒しして発表します。
本文
気象庁では、令和3年6月から、線状降水帯が発生し大雨による災害発生の危険度が急激に高まっていることをいち早くお知らせする「顕著な大雨に関する気象情報」を発表しています。
迫りくる大雨災害への危機感をいち早く高めていただくため、令和5年5月25日(木)13時から、これまで発表基準を実況で満たしたときに発表していた本情報を、予測技術を活用し、最大で30分程度前倒しして発表します。
本情報が発表された際は、自治体による避難情報や、地元気象台が発表する防災気象情報、キキクル等を確認の上、崖や川の近くなど危険な場所にいる場合は安全な場所に移動するなど、適切な防災対応をお願いします。
気象庁では、線状降水帯による大雨からの避難に資するよう、令和8年には本情報を2~3時間前を目標に発表することを計画しています。
また、明るいうちから早めの避難を行っていただくために、令和4年6月より、半日前から広域を対象に線状降水帯による大雨の可能性をお伝えしており、今後、対象地域を狭めていく計画です。
気象庁では引き続き、大雨の観測・予測技術の向上及び情報の改善に努めてまいります。
報道発表資料
顕著な大雨に関する気象情報を補足する図情報
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積乱雲が次々発生、局地的豪雨もたらす線状降水帯 最大30分早く発表 気象庁、新運用スタート
気象庁は25日、局地的豪雨をもたらす線状降水帯の発生を伝える「顕著な大雨に関する気象情報」の基準を改定し、最大30分早く発表する運用を始めた。危険が高まっていることを少しでも早く周知することが狙い。
これまで実際の降水量などの基準を満たした時点で発表していたが、雨量予測も用い、前倒しして知らせる。
線状降水帯は、発達した積乱雲が次々と発生し線状に連なる降水域で、2018年西日本豪雨など大きな災害の原因となっている。鹿児島県では21年7月に北薩で線状降水帯が確認された。
気象庁は21年6月に線状降水帯発生の情報を始め、22年6月から「半日前予測」を始めた。5段階で表す大雨・洪水警戒レベル4相当以上に位置付けられ、発表されたときには既に災害が発生している可能性がある。
鹿児島地方気象台の上園和幸防災気象官は「危険度の高まりが少しでも早く伝わることで避難に役立ててほしい」とした。
南日本新聞202305261630
「線状降水帯発生情報」気象庁が最大30分早く発表へ 迫り来る大雨災害への危機感をいち早く高めてもらう目的 今月25日から運用開始|TBS NEWS DIG