気象・災害

ゲリラ豪雨と落雷|雷による家電製品・パソコンの故障と対策

ゲリラ豪雨と落雷|雷による家電製品・パソコンの故障と対策

数年来、ゲリア豪雨と落雷に関するニュースの頻度が多くなっていると感じる方は多いと思います。ウェザーニューズがまとめた統計でも、2023年のゲリラ雷雨は全国で9.3万回以上発生していて、前年の2022年比約20%増と報じています。

広島工業大学の「雷の発生頻度と気候変化に関する研究」では、日本海沿岸と東日本を中心に、日本における雷の発生は増加傾向にあるとされ、JLDN全国雷観測ネットワークの統計を見ても直近数年で落雷数が増えていることがわかります。

雷は、人の生命を直接的に脅かすこともある自然現象ですが、落雷の頻度が多くなることで家電製品の故障などの影響も増えています。

私は以前、とあるネットワーク関連の事業者に勤めていました。年間を通じて、それまではほとんどなかった落雷による機器故障とその問い合わせが2000年前後から徐々に増え始めました。この頃は年間を通じて20件程度だったものが、2010年代に入ると1時間ほどのゲリラ雷雨後にサポート電話に問い合わせが殺到して業務が滞る状態となるようになりました。インターネットプロバイダでネットワーク管理者をしていた友人に聞くと、落雷があると「インターネットに繋がらない」という問い合わせが数百件単位で来て対応が大変と話していました。落雷の増加と広がり続けていたインターネット環境の普及が相まって、パソコンやモデムなどの機器の故障が顕著に増えたものと考られます。

 

落雷の種類

直撃雷 建物や電線・アンテナなどに直接落ちる雷

直撃雷は、民家などに直接雷が落ちるものです。

私の過去の対応経験では、直撃雷のあったお家で、照明器具や電話機・インターホンなどを含めおよそ全ての家電製品が故障(電源が入らない)した事例がありました。落雷のあった時、家主の方はお手洗いにいて、電気温水便座から「バキッ」という激しい音がしたと同時にお尻から体に電気が走り、便座の本体部分から発煙したそうで、「死ぬかと思ったよ」と話されていました。専門家による調査で、テレビアンテナに直撃後、建物の電気線(屋内配線)に強い電流(直撃雷サージ)が流れたもので、火災にならなかったのが不幸中の幸いということでした。

直撃雷は、瞬間的に数十万~数百万V(ボルト)の高電圧の電流が流れます。建物が破壊されたり、火災となる場合もあります。直撃雷サージでは、電源線や通信線を伝って家電製品はほぼ破損するとされています。

直撃雷から家電製品を守ることは非常に難しいとされ、雷ガード対策製品などを設置しても機器を保護しきれない可能性が高いといわれています。

 

誘導雷 近くの電線や電話線などに落ちる雷

誘導雷は、近くで落ちた雷が落雷地点付近の空間の電磁界が変化し、その空間に張ってある電線などに異常な過電圧・過電流が起こることで、数千~数万V(ボルト)の高電圧を伴う場合があるとされています。

家電製品は、瞬間的な過電圧による故障や火災の発生を防止するため耐雷性能があります。冷蔵庫・洗濯機・電子レンジや瞬間湯沸かし器などに付いているアース線も落雷への対策です。いわゆる白物家電やテレビなどは一定の耐雷性能を有している場合が多いですが、パソコンやモデムなどはサージ電流への対策が行われているものは少なく(対策されたモデムなども存在します)、雷の被害を受けやすい機器です。

パソコンや周辺機器は、落雷(雷サージ)の影響を受けやすく、電源コンセントにサージカット機器や電源タップなどを使用されている方も多いと思います。ただ、これらの機器は電源ばかりではなく、UTPケーブル(LANケーブル)に乗った雷サージで故障することも多くあります。過去の事例でも、パソコンのLANの接続口のみ故障というケースがあり、LABボードを交換・増設するとインターネットに接続できる場合がほとんどでした。LANボードの交換ができないときは、USB・LANやWi-Fi接続で回避することが可能です(あくまでもLANポートのみの故障)。LANポートはマザーボードに組み込まれていることが多いですが、意外にも、私の経験したケースではLANポートのみ故障が大半でした(モデム側のLANポートとパソコン側のLANポートでは、故障割合はだいたい半々で、双方とも故障のケースは1割未満でした)。

 

侵入雷 大地で吸収できない雷

ビルの避雷針や木などに落ちた雷は、多くの場合大地に浸透・吸収されます。しかし、雷の電圧(強さ)や落ちた大地など状況や環境によって電流が大地に浸透しきれずに、電線や通信などを通じて建物に侵入する場合があります。侵入雷は、概ね誘導雷と同じような被害を受けることが多くなります。

 

側撃雷 落雷したものから周囲に再放電

木や建物、人などに落ちた雷が、周囲の物・人に再放電する現象です。

 

雷(雷サージ)の侵入経路

雷は空中で放電していて、建物や地面などに落ちると一時的に異常な過電圧・過電流が発生します。これを「雷サージ」と呼びます。

雷サージは主に、電源線・電話線から建物内のコンセントや電話のモジュラージャックを通じて侵入し、接続されている(電源プラグを接続している・電話線を繋いでいる)機器を破損・故障させることがあります。

電源コンセントから侵入する雷サージは、雷ガード機器を設置すると一定の効果が期待できます。

しかし、雷サージは電源コンセントばかりではなく、テレビ線や通信線からも侵入する場合があります。電源コンセントだけ対策をしても、他の経路から侵入した雷サージによって、機器故障となるケースも多くあります。例えば、ケーブルテレビの同軸ケーブルに接続されたセットトップボックスやインターネット用モデム、光ケーブルでも中心部分に光心線を引張応力から保護するためにテンションメンバ(鋼線)が使用されているものがありこの鋼線が雷サージ電流の通路となり建物内にサージ電流を侵入させる原因となって機器故障を引き起こすことがあります(住宅への引込みに用いられるドロップ光ファイバケーブルには落雷時のサージ電流対策などのため、テンションメンバに非導電性であるFRPを使用しているものもある)。最近のテレビや録画機(ハードディスクレコーダー)などは通信機能を使用する製品がほとんどで、LANケーブルを接続している場合には、電源以外からの侵入によって故障につながることもあります。

 

雷(雷サージ)の対策

電源経由

電源からの雷サージ対策では、一般家屋向けにもブレーカーに接続する機器や免雷ブレーカのような製品もあり、家ごと守ることも可能です。ただし、設置には電気工事店などに依頼する必要があり、費用もかかります。

私は守りたい機器を接続する壁コンセントに1つ、そこに雷ガード機能のついたテーブルタップを繋いで、パソコン・周辺機器やテレビ・録画機器に給電しています。雷ガードの製品はたくさんのホームページなどで紹介されていますが、電気主任技術者の友人曰く「業界的に知られたメーカーの正しい試験性能があるものは、それなりの値段がする」そうで、勧められたものを買いました。

参考:

避雷針は、本来の役割は、直撃雷から建物本体を保護すること。

雷でブレーカーが落ちる理由は、漏電ブレーカーはノイズに弱いため落雷の際の微弱なノイズで誤作動を起こすケースと雷サージの強い電圧がかかることにより正常な動作として漏電ブレーカーが作動するケースがある。

 

通信線経由

電話やケーブルテレビ、光ケーブルには保安器と呼ばれる機器を経由して建物内に引き込まれます。この保安器は、主に雷サージが建物内に侵入することを防止するための機器ですが、保安器の性能を超えた雷サージでは保護されずに通過してしまうことがあります。

私の場合は、インターネット接続用のONU(モデム)はプロバイダからの貸与品なので、ONUに接続している無線ルーターの手前にUTP(LAN)用の雷ガード機器を繋いでいます。

 

電源プラグをコンセントから抜く

「雷がなったら、電源プラグをコンセントから抜く」というお話しを耳にしますが、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)や電気関係の学会・法人などでは「雷が鳴り響いているさなかに電源プラグを抜くと、電源プラグを抜く人が感電する恐れがあり大変危険」として、行わないようにと広報しています。したがって、雷鳴が聞こえてから電源プラグを抜くのは禁物です。

私の場合は、天気予報や気象会社などの発雷確率を参考に、出かける前に電源プラグを抜いています。電源プラグを抜くのは、パソコン・周辺機器だけです。インターネット用のモデムやルーター、テレビ・録画機器などは、録画予約など外からの操作ができなくなるので基本的にはそのままにしています。ただ、ゲリラ豪雨などで連続的に大きな雷が多くなる7月~8月は、壊れては困る機器の電源コンセントとLANケーブルは全部抜いて、コンセントやLANポートから少し離して置いています。以前、落雷のときにコンセントから火花が出て、そのまま電源プラグに飛び、モデムが壊れる様を目で見ていた経験があって、それ以来怖いので離しています(絶縁の袋に入れたり、絶縁キャップを被せると良いらしい…)。

 

雷がなったからPCの電源落とした

先日、関東地方を中心にゲリラ豪雨(雷雨)となった日に、雷が鳴ったので「PCの電源落とした」というワードがトレンドに上がりましたので、通電(電源ON)させないことは一つの方法ですが、対策をされることをおすすめします。

 

落雷による家電故障は保険がおりる

以前の勤務先で落雷被害が増えた頃、損保会社から「落雷証明を出してほしい」という案件が多く来るようになりました。担当の方に尋ねたところ、火災・家財保険で落雷による家屋の損壊や家電製品などの破損・故障について保険適用されるものがあり(特約の場合もあります)、被保険者の申告内容の確認・事実認定のために当該時間に落雷被害はあったかというものでした。勤務先では、落雷について、発生日時やエリア、問い合わせのあったユーザー、故障内容などを記録していて、気象庁の観測データと共に自社の個人情報を除く落雷確認データを文書化して出していました。

万一、落雷でお家の家電製品やパソコンなどが壊れたときは、加入している保険会社に問い合わせてみると良いと思います。

スマホも充電中だとコンセントに繋がっているので、雷サージの影響を受けないとは言い切れません。最近の落雷の多さを考えると、加入している保険の内容を確認したり、雷保証の特約を追加することなど検討されてはいかがでしょう。

 

雷関連動画

[雷のふしぎ]雷の被害を防ぐには?【電中研】

[雷のふしぎ]雷の被害を防ぐには?【電中研】

 

[雷のふしぎ]雷から身を守るには?【電中研】

[雷のふしぎ]雷から身を守るには?【電中研】

 

出典・参考文献等

2023年のゲリラ雷雨は全国で9.3万回以上発生、昨年比約20%増(ウェザーニュース)

雷の発生頻度と気候変化に関する研究(広島工業大学)

日本列島スケールで見た雷頻度の季節的変化と気候学的背景(Hiromu YOSHIDA)

日本大気電気学会

株式会社昭電

フランクリン・ジャパン

  • この記事を書いた人

uPw

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