大型ハリケーン フローレンス 13日にも上陸か
ハリケーン「フローレンス(Florence)」は勢力を強めながら米ノースカロライナ州に向け進んでおり、土砂降りの雨が何日も続くことが見込まれる。同州に上陸するハリケーンとしては、過去64年で最強となる可能性がある。
米ハリケーンセンターによると、フローレンスは11日午後(日本時間12日午前)現在、バミューダ諸島の南をゆっくりと西北西に進んでおり、風速60m/sの猛烈な勢いを維持している。
原発も運転停止を準備 カテゴリー5となる可能性も
直撃が予想されるノースカロライナ州などで非常事態宣言が発令され、予想進路にある原子力発電所は運転停止を計画。
フローレンスの規模は、現在、5段階で2番目の大きさの「カテゴリー4」。しかし、米当局者によると、最大の「カテゴリー5」に勢力を強める恐れがあり「命に関わる沿岸部の暴風雨と内陸の洪水」を警告している。
各州で非常事態宣言
合衆国政府は11日、集中豪雨と洪水の懸念から、メリーランド、ノースカロライナ、サウスカロライナ、バージニアの4州に非常事態を宣言した。
フローレンスによる甚大な被害が予想される地域の100万を超える人々に避難命令が出されたことから、市街地はもとより、ハイウエイも各地で大渋滞を引き起こし、さらに、物資を買い求める人々などで混乱が生じている。
米連邦緊急事態管理庁(FEMA)緊急対応・復旧部門のジェフ・バイアード(Jeff Byard)副長官は首都ワシントンでの記者会見で、フローレンスは「直撃」になるという予報であり、洪水や停電、人命の損失など大規模な被害をもたらしかねないと警告。さらに同域を襲うハリケーンとしては「ここ数十年で最も強力」だとして、避難の必要性を強調した。
(AFPBB)
高潮は4メートルに達する可能性
米国立ハリケーン・センター(NHC)によると、フローレンスは「壊滅的な鉄砲水」をもたらす可能性があるほか、13フィート(4メートル)の高潮が発生するとの予報も出ている。
1954年にノースカロライナとサウスカロライナの州境近辺に上陸した後に同地域を急速に通過したハリケーン「ヘーゼル」とは異なり、フローレンスは直撃後に域内に数日停滞する見通しだと、アキュウェザーの創業者ジョエル・マイヤーズ氏が指摘した。同氏は被害総額が300億ドル(約3兆3400億円)に上る可能性があると予想している。
(Broomberg)
被害規模は200億ドル、日本円で2兆2千億円規模の可能性
ロイター通信によると、米南東部に向かっている大型ハリケーン・フローレンスは、ノースカロライナ州を直撃する見込みで、現在も「カテゴリー4」の勢力を維持している。
調査会社RMSが11日にまとめたリポートによると、フローレンスの被害による損失は、1954年の「ヘーゼル」および1989年の「ヒューゴ」の2つのハリケーンに匹敵するとみられ、被害規模は200億ドル(日本円で2兆2千億円)に上ると試算している。
RMSはリポートに「過去の被害を振り返ると、ノースカロライナとサウスカロライナ両州に上陸したハリケーンは珍しいが、今回のハリケーンで生じる高潮や暴風、洪水による被害は甚大となる可能性がある」と記し、同社ではフローレンスの上陸後に被害の推計学を改めて提示するとしている。
CNNは予想進路上にある6箇所の原発について懸念を報じる
大型ハリケーン「フローレンス」が米東部沿岸に接近する中で、米連邦緊急事態管理局(FEMA)当局者は13日までに、フローレンスの予想される進路上の6カ所に原子力発電所がちょうど位置しているものの現段階で安全性に問題はないだろうとの見解を示した。
ただ、一部の原子力専門家らは洪水や豪雨が発生すれば、原発の防御態勢を突き崩す恐れがあるとの懸念を示した。公共政策などを提言する組織「憂慮する科学者同盟」は一部の原発は洪水対策などに関する対応策の情報が十分に公開されていないと指摘した。
フローレンスの予想進路上にあるノースカロライナ、サウスカロライナ両州には米企業「デューク・エナジー」が操業する原発が6カ所にある。この中でノースカロライナ州ローリー近くにある「ブランズウィック原発」と「シアロン・ハリス原発」は上陸予想地点に最も近い原発。憂慮する科学者同盟がハリケーン対策で不安視しているのはこのブランズウィック原発となっている。
FEMA幹部はメディアとの電話会見で、これら原発の建物は明らかに強固で、非常事態時に使用出来る発電機も備えていると説明。ハリケーン襲来後の原発への影響については迅速に調査するとし、この時点で原発に関する全ての問題点への懸念はないと言い切った。
一方、憂慮する科学者同盟によると、デューク・エナジー社は2012年、米原子力規制委員会(NRC)に対しブランズウィック原発の数百カ所で浸水対策の障壁の消失や欠陥が判明したとの報告書を提出したと指摘。この問題に関して15年にNRCに再度出された報告書は公表されていないとも説明した。
NRCの報道担当者は、この2度目の報告書が公開されていないのなら治安対策上、機微な問題が含まれていた可能性があるともした。ただ、15年の報告書の公開などに関する位置付けについては承知していないとも述べた。
その上で、今回のフローレンス接近を受け、同原発の暴風雨対策を調べたとし、NRCが指示する規定に合致したことに満足しているとも語った。
原発における浸水対策への懸念は、2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故以降、一層高まっていた。
フローレンスは米東部時間の12日午後11時(日本時間13日午後0時)現在、ノースカロライナ州ウィルミントンから東南東へ約451キロ離れた海上にあり、最大風速は約49メートル。勢力の規模は5段階で下から2番目のカテゴリー2。
今週末にノースカロライナ州へ上陸し、その後、進路を緩やかに左へ向けると予想されている。同州は安全に脅威を及ぼしかねない高潮、突風や豪雨に見舞われる可能性があり、サウスカロライナ州の多くの地域も危険な状態に陥る恐れがある。