気象・災害

JPCZ 日本海寒帯気団収束帯|特に日本海側に大雪をもたらす線状降雪帯

JPCZ

earth.nullschool.net

JPCZは、朝鮮半島の白頭山の南東付近を起点に日本海側の北陸から山陰地域に向かって現れることが多い気象現象です。例年、冬のシーズンに数回、多い時で十回程度発生するとされています。ユーラシア大陸沿岸地域から東北、北陸方面に向かって起こる場合もあります。

 

JPCZ|日本海寒帯気団収束帯

冬の線状降水帯・線状降雪帯とも

JPCZ:日本海寒帯気団収束帯は、大陸から日本海方向に降りてくる寒気が、高度の高い遮蔽物(山岳など)により2方向に分断され、風向や気圧配置などの影響により、分断された2方向の寒気が再びぶつかり合う(接触する)地点(場所)及び現象を示す。

英名のJapan sea Polar air mass Convergence Zone から、JPCZとも呼称される。

筋状の寒気が次々と流れ込み日本海側に大雪をもたらすことから、冬の線状降水帯と表現されることもある。

近年、線状降雪帯と呼称する識者もみられる。

 

概要

冬季において、西高東低のいわゆる「冬型の気圧配置」になると、西または北西の強い風があらわれる。

この風が、冬の日本海の(対馬海流:暖流などの影響で暖かい海水)上を(寒気団の冷たい風が)通り抜けることで、風の流れに沿った(日本海で水分を補給した)筋状の雲が幾筋も発生する。この筋状の雲は、「雪雲」となる。

 

cf:雪雲
基本的に雪雲も雨雲も、高高度では性質は同じ。上空は気温が低いため、雲の粒は氷晶となっている。
その氷晶が地上に降り注ぐまでに解ければ雨、解けずに地上まで達すれば雪。

雪雲は雨雲と比べ、水滴よりも光をよく反射するため、濃い色をした雨雲より明るく見える。
また、雪をもたらす雲の雲頂は一般に高度3km前後だが、雨をもたらす雲の雲頂は高度5kmを越えるものが多く、10kmに達するものもあり、雲の層が厚いことで色濃く見える。

よって、雪雲はおおむね上空3,000m付近から2,000m付近に多くある。

3,000m付近の気温が「雪を降らせる目安」として、気象解説などで紹介されるのはこのため。

JPCZ

筋状の雲が多い冬の日本付近 1995年1月14日12時の可視画像(気象庁提供)

上の気象衛星の雲画像でも分かるように、降雪をもたらす雪雲は、筋状に何十本も筋状に幾重にも並ぶ。

この筋が平行ではなく、一定の流れ(位置関係)で衝突することがある。この状態(現象)及び場所を、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)と呼ぶ。

 

JPCZの発生原因

日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が発生する原因として、朝鮮半島北部の白頭山やその周囲の山脈の影響によるものがひとつとされている。

白頭山付近の山岳は、2,700mを超える高山で、寒気の気流が強制的に二分される。

二分された気流は、気圧配置や風向などの影響により、再び合流し、収束する。

この収束した(ぶつかり合った)場所から、それに沿って、筋状の雲がさらに発達することがある。

日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)のライン上では、小さな台風のような渦(擾乱)が発生することがあり、これに伴って小さな低気圧が発生、その中心では積乱雲が発達して雷や雹といった激しい天候になることがある。

また、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)は主に日本海側の雪に影響を及ぼすが、日本列島を越えて太平洋側にまで伸び、関東・東海・四国地方などにも大雪をもたらすことがある。

日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)は、白頭山付近から南東に伸びるように位置することが多いため、発生原因の大きな理由になっていると考えられている。

 

気象庁資料(JPCZ)

JPCZ

 

白頭山の位置関係

JPCZ

赤丸付近で北西からの気流が別れている

白頭山は中国・吉林省と北朝鮮・両江道の国境地帯にある火山。頂上のカルデラ湖を囲むように2,500m級の16の峰がそびえる。

 

日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の影響

福井県嶺南地方、岐阜県西部山沿い、滋賀県北部、福井県嶺北地方、兵庫県北部、京都府北部、鳥取県、島根県東部、山口県北部など。

JPCZの上陸地点は気圧配置に対応して東西に移動するため決まった位置というのは無く、東北南部から山陰までの広い範囲に影響を及ぼしうる。

特に福井県嶺南(若狭湾周辺)への上陸頻度が最も高く、次いで兵庫県北部~京都府北部(丹後半島周辺)、福井県嶺北地方も頻度が高い。

寒気が非常に強い場合は岐阜県西部平野部、愛知県西部・三重県北部・京都府南部等の太平洋側にも風上の山地を超えてJPCZが流入することがあり、名古屋市や岐阜市、四日市市、京都市等で大雪が降る際の典型的な気象条件として挙げられる。

 

過去に大雪をもたらした例

日本海寒帯気団収束帯は過去に北陸西部、山陰に加え、東海地方や近畿地方の都市部に何度も大雪をもたらしており、これらの地域での主要な大雪の原因となっている。

  • 1995年12月25 – 26日:四日市53cm(観測史上最大)、京都14cmなど。
  • 1996年1月10日 : 岐阜48cm(42年ぶり)
  • 2005年
    • 12月18 – 19日:岐阜32cm、名古屋23cm(58年ぶり)、広島17cmなど。またこの時は瀬戸内海に流れ出た雲が四国山地で再発達し、太平洋側の高知市でも9cmの記録的大雪となっている。
    • 12月22 – 23日:名古屋13cm、広島12cmなど。
  • 2010年12月31日:米子89cm(観測史上最大)、松江56cm、鳥取53cm、京都9cmなど。
  • 2012年2月2日:舞鶴87cm(観測史上最大)、彦根47cm、名古屋15cmなど。
  • 2014年12月17 – 18日:名古屋23cm(9年ぶり)、広島8cmなど。
  • 2015年1月1 – 2日:京都22cm(61年ぶり)、福井56cm、豊岡42cmなど。
  • 2017年1月14 – 15日:三重県北部や西日本の広い範囲で大雪。四日市市塩浜では17cmであったが、少し内陸の市街地では40cmを超えていたとの報告もあり、その差が問題となった。広島19cm(33年ぶり)、京都14cm 。
  • 2017年1月23 – 24日:山陰・北近畿・滋賀県湖東中心に大雪。鳥取県智頭108cm、彦根60cm(33年ぶり)、鳥取57cm、米子45cm、松江39cm。
  • 2017年2月10 – 12日:山陰・北近畿で再び記録的大雪。鳥取91cm(33年ぶり)、豊岡80cm。
  • 2018年2月6 – 8日:北陸西部で記録的大雪。福井147cm(37年ぶり)、金沢87cm。

 

「JPCZの謎」を追う調査に密着“最強寒波”直下の日本海で(2023年2月2日)

【独自】「JPCZの謎」を追う調査に密着“最強寒波”直下の日本海で(2023年2月2日)

 

気象庁

  • この記事を書いた人

uPw

-気象・災害