平成30年7月豪雨|別称 西日本豪雨
2018年(平成30年)6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で発生した、台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨。同年7月9日に気象庁が命名した。別称、西日本豪雨。
6月29日に発生した台風7号は、太平洋高気圧の外側を回り込むように7月4日にかけて東シナ海を北上し、九州地方では台風の影響による雨が7月3日ごろから降り続いた。台風は対馬海峡付近で進路を北東に変えて日本海上に抜けた[1] が、太平洋高気圧が張り出した影響で梅雨前線が7月2日から4日頃に北海道に停滞し、北海道の広範囲で雨量が7月の月降水量の平年値を超えた。その後、太平洋高気圧が南東に移動したことで梅雨前線が南下。7月5日から8日にかけて梅雨前線が西日本付近に停滞し、そこに台風8号などから大量の湿った空気が流れ込んだため、西日本から東海にかけて大雨が連日続いた。梅雨前線は9日に北上して活動を弱めるまで日本上空に停滞。西日本から東日本にかけて広い範囲で記録的な大雨となった。
7月6日17時10分に長崎・福岡・佐賀の3県に大雨特別警報が発表され、続いて19時40分に広島・岡山・鳥取、22時50分に京都・兵庫と、1日で8府県に大雨特別警報が発表された。さらに翌7日12時50分には岐阜県、翌8日5時50分には高知、愛媛の2県にも大雨特別警報が発表され、最終的に運用を開始して以来最多となる計11府県で大雨特別警報が発表された。
この豪雨により、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が200人を超える甚大な災害となった。また、全国で上水道や通信といったライフラインに被害が及んだほか、交通障害が広域的に発生している。平成に入ってからの豪雨災害としては初めて死者数が100人を超え、「平成最悪の水害」と報道された。さらに、昭和にさかのぼっても1982年に300人近い死者・行方不明者を出した長崎大水害(昭和57年7月豪雨)以降、最悪の被害となった。
気象庁による分析によると、7月5日以降の豪雨の原因は次に掲げることが考えられる。
日本の北にあるオホーツク海高気圧が非常に発達し、南東にある太平洋高気圧も強まったため、その間に挟まれた梅雨前線が停滞・強化されたこと。
対流活動が盛んになっていた東シナ海付近からの南東風と、太平洋高気圧の縁を回る南風が強まり、二方向から梅雨前線に向かって流れ込んだ湿った空気が西日本付近で合流し、極めて大量の水蒸気がもたらされたこと。
二つの高気圧が強まったのには、寒帯前線ジェット気流と亜熱帯ジェット気流が大きく蛇行していたことが影響しており、この気流の蛇行はその後の日本付近の記録的高温にも影響した。また、九州から東海にかけて15箇所で線状降水帯が発生し、それによって局地的にさらに雨量が多くなった地域があった。
台風に関する内容は、台風の発生と熱帯低気圧|台風関連の用語・基礎知識にまとめています。
7月6日から西日本一帯を襲った豪雨
西日本を中心とした豪雨被害は9日、被害がさらに広く、甚大であることが時間の経過と共に明らかになってきた。
9日午後0時現在で、13府県105人の死亡を確認、87人の安否が不明となっている。
しかし、被害の全容は未だ把握されるに至っていない。
数十年に一度あるかないかという重大な災害が発生し、生命が危険に晒される可能性が非常に高い場合に発せられる、特別警報。
今回、西日本で発生した豪雨では、6日〜8日にかけ、福岡、佐賀、長崎、広島、岡山、鳥取、京都、兵庫、岐阜、愛媛、高知の11府県に「大雨特別警報」が発表された。
2013年に特別警報の運用が始まって以来、ひとつの災害事案で4都道府県以上に発せられたのは初めてである。
各地で救助活動が続くが、これまでの降雨で緩んだ地盤が二次災害を起こしかねない状況で、また、新たな土砂崩落などが発生する可能性も指摘されており、厳重な警戒の継続を関係機関が求めている。
消防庁によると、短期間に死者が100人を超えた豪雨災害は1982年7月、島根県を中心に112人が死亡して以来。
9日午前5時現在、避難指示及び避難勧告は17府県に及び、各地の避難所には8日夜までに少なくともおよそ2万3000人が避難している。
気象庁 『平成30年7月豪雨』 と命名
気象庁は9日、西日本を中心に降り続いた今回の記録的な大雨の名称を『平成30年7月豪雨」と決定、発表した。
気象庁の命名基準
気象庁では、顕著な災害が発生した自然現象について、一定の基準・法則を元に、名称を定めている。
顕著な災害を起こした自然災害の名称について(平成30年7月9日改製・発表)
顕著な災害を起こした自然現象の名称
気象庁では、顕著な災害を起こした自然現象について名称を定めることとしています。名称を定めることにより、防災関係機関等による災害発生後の応急・復旧活動の円滑化を図るとともに、当該災害における経験や貴重な教訓を後世に伝承することを期待するものです。
また、各地域で独自に定められた災害やそれをもたらした自然現象の名称についても、後世への伝承の観点から利用し普及を図ることとしています。
名称を定める基準及び付け方
(1) 気象(台風を除く)
ア 名称を定める基準
顕著な被害(損壊家屋等1,000棟程度以上または浸水家屋10,000棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害、特異な気象現象による被害など)が発生した場合
イ 名称の付け方
原則として、「元号年+月+顕著な被害が起きた地域名+現象名」とします。
ここで「現象名」とは、豪雨、豪雪、暴風、高潮等をいいます。
なお、地域名については、被害の広がり等に応じてその都度判断します。また、豪雪については、被害が長期間にわたることが多いため、冬期間全体を通した名称とします。
(2) 台風
ア 名称を定める基準
顕著な被害(損壊家屋等1,000棟程度以上または浸水家屋10,000棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害など)が発生し、かつ後世への伝承の観点から特に名称を定める必要があると認められる場合
イ 名称の付け方
原則として、「元号年+顕著な被害が起きた地域・河川名+台風」とします。
ここで「顕著な被害が起きた地域・河川名」とは、後世への伝承の観点に着目して最も適した都道府県名、市町村名、地域名、河川名等をいいます。
(3)地震
ア 名称を定める基準
(ア)地震の規模が大きい場合
陸域: M7.0以上(深さ100 km以浅)かつ最大震度5強以上
海域: M7.5以上(深さ100 km以浅)であり、かつ最大震度5強以上または津波の高さ2 m以上
(イ)顕著な被害が発生した場合(全壊家屋100棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害など)
(ウ)群発地震で被害が大きかった場合等
イ 名称の付け方
原則として、「元号年+地震情報に用いる地域名+地震」とします。
なお、定めた名称は、一連の地震活動全体を指します。また、アの基準を満たす地震が複数発生した場合には、原則として一連の地震活動が始まった時点の元号年を用います。
(4)火山
ア 名称を定める基準
顕著な被害が発生した場合(相当の人的被害など)、または長期間にわたる避難生活等の影響があった場合
イ 名称の付け方
原則として、「元号年+火山名+噴火」とします。
(5)共通事項
名称を定める際に地域独自の名称がある場合には、それを考慮します。
名称を文書等で使用する際、必要に応じて元号年に続いて括弧書きで西暦年を併記する、又は元号年を西暦年に置き換えることがあります。
名称を定める時期
名称を定める基準を満たす場合、できるだけ速やかに名称を定めます。
ただし、台風の名称は翌年の5月までに定めることを原則とし、災害発生後の応急活動の段階では台風番号を用います。火山噴火など対象となる自然現象やその影響が長期間継続する場合には、顕著な災害・現象等の推移に応じて後日、名称を定めます。
地域独自の名称の普及
地域毎に、地方公共団体等が顕著な災害やそれをもたらした自然現象について独自の名称を通称として用いることがあります(例:7.13新潟豪雨、紀伊半島大水害等)。
地方公共団体等がこれら地域独自の名称を定めるにあたっては気象庁は可能な限り協力するとともに、関連する資料等を作成する際には当該地域における後世への伝承の観点から当該名称を利用し、普及を図ります。
参考
自然現象の名称とは別に、政府が災害の呼称を定めることがあります(例:阪神・淡路大震災、東日本大震災)。
気象庁が海外向けの資料等を作成する際には、台風番号に代わって台風委員会で定めた名前を使用します。
気象庁が名称を定めた気象現象
1 | 洞爺丸台風 | 昭和29年9月(台風第15号) |
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2 | 狩野川台風 | 昭和33年9月(台風第22号) |
3 | 宮古島台風 | 昭和34年9月(台風第14号) (第2宮古島台風命名の際にさかのぼって命名) |
4 | 伊勢湾台風 | 昭和34年9月(台風第15号) |
5 | 昭和36年梅雨前線豪雨 | 昭和36年6月24日~7月10日 |
6 | 第2室戸台風 | 昭和36年9月(台風第18号) |
7 | 昭和38年1月豪雪 | 北陸地方を中心とする大雪 |
8 | 昭和39年7月山陰北陸豪雨 | 昭和39年7月18日~19日 |
9 | 第2宮古島台風 | 昭和41年9月(台風第18号) |
10 | 昭和42年7月豪雨 | 昭和42年7月7日~10日 |
11 | 第3宮古島台風 | 昭和43年9月(台風第16号) |
12 | 昭和45年1月低気圧 | 昭和45年1月30日~2月2日 |
13 | 昭和47年7月豪雨 | 昭和47年7月3日~13日 |
14 | 沖永良部台風 | 昭和52年9月(台風第9号) |
15 | 昭和57年7月豪雨 | 昭和57年7月23日~25日 |
16 | 昭和58年7月豪雨 | 昭和58年7月20日~23日 |
17 | 平成5年8月豪雨 | 平成5年7月31日~8月7日 |
18 | 平成16年7月新潟・福島豪雨 | 平成16年7月12日~13日 |
19 | 平成16年7月福井豪雨 | 平成16年7月17日~18日 |
20 | 平成18年豪雪 | 平成18年の冬に発生した大雪 |
21 | 平成18年7月豪雨 | 平成18年7月15日~24日 |
22 | 平成20年8月末豪雨 | 平成20年8月26日~31日 |
23 | 平成21年7月中国・九州北部豪雨 | 平成21年7月19日~26日 |
24 | 平成23年7月新潟・福島豪雨 | 平成23年7月27日~30日 |
25 | 平成24年7月九州北部豪雨 | 平成24年7月11日~14日 |
26 | 平成26年8月豪雨 | 平成26年7月30日~8月26日 |
27 | 平成27年9月関東・東北豪雨 | 平成27年9月9日~11日 |
28 | 平成29年7月九州北部豪雨 | 平成29年7月5日~6日 |